「令和」ゆかりの地、福岡県太宰府市にある太宰府天満宮
新しい年を迎え、初詣に出かける人も多いと思います。
近所の神社やお寺だけでなく、有名な神社やお寺へ出かけようと計画している人も多いことでしょう。
ところで、神社には「天満宮」「八幡宮」「稲荷」などさまざまな名称があり、ご利益もそれぞれ違うといわれます。
神社にまつわるさまざまな疑問について、和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。
Q.そもそも、神社とは。いつごろから存在するのでしょうか。
齊木さん「神社とは、神の社(やしろ)と書くように神様の居場所のような扱いになります。
日本で一番古いといわれている神社は諸説ありますが、一説には、現在の奈良県桜井市にある『大神(おおみわ)神社』といわれています。
そこでは、神の山『三輪山』に神様がいるとされ、本殿はありません。
日本で現存する最古の歴史書『古事記』や正史に、大神神社は記載されています。
その内容が真実だとすれば、いつとは断定できないものの、日本国ができる以前から大神神社はあったことになります。
それだけ歴史が深く、今も人々の信仰の深い神社として存在しています」
Q.神社には主に、どのような種類があるのでしょうか。
齊木さん「神社にはいくつかの種類があります。主なものをご紹介します」
・八幡宮(はちまんぐう)…八幡神を祭神とする神社の総称で、『ヤワタノミヤ』ともいいます。弓矢の神として、武士を中心に古くから広く信仰の対象とされました。
八幡の起源は、宇佐神宮(大分県宇佐市)で八幡神が祭られたことに始まります。
・伊勢…『お伊勢さん』とも呼ばれる、三重県伊勢市にある神社の正式名称は、地名も付けない『神宮(じんぐう)』であり、他の神宮と区別するために『伊勢神宮』と称されています。
起源は約2000年前、大和(奈良県)から皇祖神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)のつえ代わりとして旅した倭姫命(やまとひめのみこと)が、現在一般に『内宮(ないくう)』と呼ばれる宮の位置を定めたとされています。
・天神…日本における天神(雷神)に対する信仰のことで、本来は特定の神の名前ではありませんでしたが、平安時代に学者・政治家として活躍した菅原道真が没後、『天満大自在天神(てんまんだいじざいてんじん)』という神格で祭られ、学問の神として知られるようになりました。
京都市上京区の北野天満宮や、『令和』ゆかりの地・福岡県太宰府市にある太宰府天満宮が有名です。
・稲荷…稲荷と付く神社にお祭りされている神様『宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)』はもともと、食物や穀物、つまり農業の神様でした。しかし、産業が発展する中で、農業だけでなく産業振興・商売繁盛の神様として商売人や経営者からの信仰を集めるようになりました。
・祇園…平安時代の末期、第56代清和天皇の御世、京都では疫病が流行して多くの人々が亡くなったり、落雷などの災害が起こったりしました。
これらの原因が、災害で被害に遭ったり、政治で失脚したりした人々のたたりであり、その霊を鎮めることによってその力を頂くという御霊(ごりょう)信仰がはやりました。
このことから、『厄よけ』のご神徳があるとされています。『祇園祭』で有名な八坂神社(京都市東山区)などがあります。
・明治…明治神宮(東京都渋谷区)は、明治天皇と昭憲皇太后をお祭りする神社で、1920(大正9)年11月1日、両御祭神と特にゆかりの深い代々木の地に鎮座されました。
生前仲むつまじかった明治天皇と昭憲皇太后ご夫妻が祭られていることから、恋愛成就や良縁のご利益があるといわれています。
Q.「出雲大社」「伏見稲荷大社」のように「大社」とついている場合、普通の神社と何が違うのでしょうか。
齊木さん「『神社』『大社』の違いは、社号の違いです。神社は最も一般的な社号で、かつ神社の総称であり、特に基準はありません。
他には『神宮』『宮』もあり、こちらは天皇や皇室にまつわる人物を祭っている神社になります。
大社は、祭神と神社名を共有する神社の系列の頂点に立つ神社、信仰の本源となる神社のことを指します。
企業でいえば本社や本店にあたる神社に与えられる社号が大社です。
この大社という社号を名乗るには基準があります。平安時代に定められ、戦前まで行われていた神社の社格制度(神社の“ランキング”を決める制度)の中で、『官弊大社』や『国弊大社』という極めて高いランク付けがされていることも、大社という社号を名乗る基準になっています」
Q.「天神様は学問の神様」といわれますが、ほかの神社もそれぞれのご利益があると思います。
主なものを教えてください。
齊木さん「伏見稲荷大社(京都市伏見区)を本山とする稲荷神社は、先述したように五穀豊穣(ほうじょう)をつかさどっていましたが、転じて、商売繁盛のご利益があるとされます。
また、宇佐神宮または石清水八幡宮(京都府八幡市)を総本社とする八幡神社は、勝負の神様と言われ、『勝負運』『金運』のご利益があります。
また、出雲大社(島根県出雲市)は『縁結び』のご利益があることで知られています。
御祭神の大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)は『国譲り』と呼ばれる、取引、重要交渉事案を見事に成し遂げたことから縁結びの神様として有名で、6の女神と結ばれ、その間に180の子どもをもうけたと言われています」
Q.ご利益として伝わるもの以外のお願いをしてもよいのでしょうか。
齊木さん「そもそも、神様は『私たちに恵みを与えてくださる存在』ですので、ご利益として伝わるもの以外のお願いをしてもよいとされています。
天神様とされる菅原道真は学問の神様として祭られています。代々続く学問の家系で育ち、15歳で元服(成人)した道真は、現在の大学生にあたる『文章生(もんじょうしょう)』となるために勉学に励み、18歳で合格します。
早くして合格したことから学問の神様として有名になりましたが、恵みを与えてくださる神様であることは変わりませんので、その他のお願いをしても問題はありません。
ただし、ご利益に合わせた神社にお参りしたい気持ちが強い場合は、探して訪れるのも一つの手段です」
Q.これまで名前が挙がった以外で、特徴のある神社を教えてください。
齊木さん「群馬県高崎市の榛名(はるな)神社は『御姿岩(みすがたいわ)』という巨岩をご神体としているのが特徴です。
社殿のすぐ上にある、今にも落ちてきそうな岩が御姿岩です。
また、京都の嵐山にある法輪寺の中には、電気・電波の神様『電電明神』を祭った『電電宮』があります。電気・電波の発展や無事故を祈願することができ、ITやテレビ業界の関係者も参拝に訪れます。
SDカードを使った『SDお守り』が特徴です」
Q.神社をお参りすると、境内にさまざまな小さな神社があることがあります。すべてお参りした方がよいのでしょうか。
齊木さん「神社の境内にある小さな社は『摂社(せっしゃ)』『末社(まっしゃ)』と呼ばれます。
一般に摂社はその神社のお祭神に関する神様が祭られ、末社はそれ以外の神様が祭られています。
つまり、本殿の神様とは別の神様ですので、それぞれ別の神社であると考えられます。すべてにお参りすべきだとは決められていませんので、摂社や末社の神様とご利益を調べて、必要に応じてお参りしてみてはいかがでしょうか」
引用元:オトナンサー
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200102-00055929-otonans-life