実は犬じゃなかった! 神社の狛犬にまつわる「3つの謎」

実は犬じゃなかった! 神社の狛犬にまつわる「3つの謎

神社に行くと境内にいる一対の狛犬(こまいぬ)。

普段、じっくり観察することは少ないのですが、神社によって個性があり、特定の狛犬ファンがいるというのも納得できる、愛らしい風貌です。

実はこの二躯(く)は別々の存在で、素性の異なる「獅子」と「狛犬」という、別々の名前をもち、犬とは全く関係のない霊獣でした。

今回は神社の狛犬にまつわる3つの謎について紹介しましょう。

謎その1:なぜ別々の霊獣が一つの名前で呼ばれるようになったのか

 

神社に向かって右側にいて口を開けた方が「獅子」。左側が口を閉じた「狛犬」で、狛犬には角があります。

中国から渡ってきた(唐)獅子と日本で発達した狛犬は、それぞれ別々の空想上の生き物です。

狛犬は日本で誕生・進化した霊獣で、中国に狛犬は存在しません。

獅子の起源については、諸説ありますが、もとは古代オリエント文明で王様の座る玉座に、二頭のライオンが装飾されていた「獅子座」が起源であるという説が一般的です。

権力者が座る場所に力のある動物を描くことで、権力の座を守り、対外的に権力の力を誇示する狙いがありました。

ライオンのついた玉座が中国へ渡り、実際のライオンよりも強い、空想上の動物である唐獅子へと変化します。

皇帝の椅子には一対の獅子が描かれるようになりました。

この伝説の動物の唐獅子が、遣唐使と同時に日本へ渡ってきたのです。

仏教が日本に伝来して、仏様を守る守護神の存在が広まり、神道にも神様を守る象徴として獅子が登場するようになり、二躯の獅子が誕生します。

しかし、日本では「左近の桜」「右近の橘」というように、二つの全く同じものが並び立つよりも、左右異なる存在であることが好まれます。

そこで、獅子だけでなく狛犬が日本独自の霊獣として誕生しました。

したがって獅子が狛犬の祖先ではあるものの、狛犬と獅子は全く違う別の霊獣です。

枕草子や徒然草でも、獅子と狛犬はきちんと別々に表現されています。

阿吽の口元や、角以外に、獅子と狛犬の形はよく似ています。

いつのまにか、両方一緒に「狛犬」と呼ばれるようになってしまいました。

なぜ獅子が消えて狛犬だけが呼び名として残されたのか、はっきりしたことはわかっていません。

謎その2:犬ではないのに、なぜ狛「犬」なのか

 

日本で独自に進化した霊獣の狛犬ですが、もとはライオンから発想された唐獅子がモデルであり、犬とは何の関係もありません。

なぜ犬ではないのに狛犬と名前が付けられたのかは、今のところ不明です。

狛という漢字の由来は、仔馬の駒(こま)から来ているという説や、高麗説、貊(ハク、中国北方の異民族の名前)と同字説などがあり、どれも決め手に欠けています。

さらに、どの説にも犬との関わりを明確にしたものはありません。

狛犬は狛の犬ではなく、狛犬という、たまたま名前に犬がついているだけの、霊獣なのです。

唐獅子は中国でライオンをモデルにした空想上の動物なので、狛犬というより狛猫の方が近い気がします。

また、日本では「犬」という名称は取るに足らないものや、ありふれたものに付けられてきた歴史があります。

神様をお守りする霊獣に「犬」を付けるのは、ある意味不自然な気もします。

謎その3:なぜ狛犬は石でできているのか?

 

現在、狛犬は石造りのものがほとんどですが、平安から鎌倉時代には木造や金属製の狛犬もありました。

部屋の中で、縁起の良いインテリアやキャラクターグッズのように愛でられていたようです。

清少納言も「めでたきもの」と獅子・狛犬のファンでした。

神社にお参りに行く文化が栄えた江戸時代、石造りの狛犬が流行します。

屋外の参道に設置されるため、自然に石造りとなったと考えられていますが、誰が最初に狛犬を石で作ったのか、なぜ石の狛犬ばかりが増えて行ったのかも、よくわかっていません。

わからないことばかりの狛犬ですが、それでも神社で出会うと、犬ではなくても、愛犬家としては何となく嬉しい気分にさせられるもの。

中国から来た獅子から、日本独自に発展させた狛犬の文化を、これからも大切にしていきたいものですね。

 

引用元:サライ.jp
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200215-00010003-seraijp-life

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