海外旅行ガイドブックの決定版『地球の歩き方』から、今回紹介するのは「現世極楽浄土」。
この世に極楽の世界を残したい――。そんな思いから建てられたのが京都にある即成院です。
「なぜ現世極楽浄土と呼ばれるのか」「仏様のオーケストラとは」など、住職の平野雅章さんにうかがいました。
京都在住のタレント・吉岡淳さんにも同席いただき、インタビューは大盛り上がり。
ここだけの特別な体験にも挑戦しました。

● まずは御祈祷からスタート。 迫力の読経に全身がビリビリ!

御本尊の前で手を合わせ、さてインタビューを。と思ったら、「こちらへどうぞ」とさらに中へ入れていただき、本堂の内陣で御祈祷を受けることになりました。
通常の御祈祷は御本尊の前に住職が座り、お経をあげるのを聞くものですが、こちらは違います。
御本尊の阿弥陀如来と周囲を囲む二十五菩薩像の前に座った我々の後ろから拝んでいただけるのです。
まるでオペラのような大音量のお経と響き渡る太鼓の音に、体の芯からビリビリとしびれるよう。
御祈祷を担当しているのはふたりだけのはずなのに、一気に人数が増えたような迫力です。
御祈祷後にそのことを伝えると、「皆さんそうおっしゃられるんです」と住職はにっこり。
当然ながらお堂に音響効果は一切ないのだとか。

内陣に安置されている阿弥陀如来と二十五菩薩の半分は、平安時代の開創当初から一切修復を加えていない姿を保っています。
仏様の体の中にはありがたいお経や胎内仏などを入れるのが一般的ですが、即成院の仏様の体の中は空洞なのだそうです。
「仏様の中を空洞にすることによって、仏様が極楽から来られるときに奏でる妙なる調べが一層響くように。あるいは、お経を唱えるとそれが仏様の体で反響するように考えられています」と住職。「祈願主が希望するのは最良の気の流れを仏様にいただくこと。
おなかの中に何もないことをよく『腹に何も抱えていない清らかな状態』といいますが、その清らかな空間を作るために、場所によっては皮ほどの厚さしかないほど彫り込まれているんです。
その状態で1000年保っているのはすごいことなんですよ。技術でカバーしているんです」

● 参詣者は国内のみならず世界から。 ドキドキの初体験も

即成院を創建したのは橘俊綱公とされています。
父親は藤原氏の全盛期を築いた藤原頼通公、祖父は「この世をば わが世とぞ思ふ」と詠んだあの藤原道長公。
つまり、超一級の血筋をもつ平安貴族であり、平安時代最高の風流人とも称される御仁です。
俊綱公は父親が建てた宇治の平等院を超える極楽の世界をこの世に残したいとの考えから、「現世でも極楽、来世でも極楽」をかなえる即成院を建てました。
阿弥陀如来と二十五菩薩の姿は、極楽浄土を立体的に表現したもの。
この世で唯一極楽を感じられるお寺ということで「現世極楽浄土」と呼ばれるようになったのです。

菩薩様は極楽浄土に人々を導く際に音楽を奏でるとされることから、二十五菩薩の半数は楽器を持っています。
そのことから「仏様のオーケストラ」の異名がつきました。
平安時代から仏様の前で歌会をして最高の歌を献じたり、舞を踊って奉納したり、ということがあったようですが、今でも演奏家が音楽を奏でたり、ワンフレーズを歌ったり、ときには歌舞伎役者が一場面を演じたりするなど、各分野の方が最高の技術・時間をお供えしています。
住職からは「アカデミー賞を取った方や世界的に有名な舞台俳優の方が来ることもありますし、最近でしたら○○○(人気アイドルグループ)の方とか来ましたね」と驚きの話もうかがいました。

グローバルな話を聞いた後で案内していただいたのは、金色のお面がずらりと並ぶ部屋。即成院では毎年10月第3日曜に菩薩の面と装束を身につけて境内を練り歩く「二十五菩薩お練り法要」(※)を行っています。
展示されているお面はその法要で使われるもの。そして、今回は菩薩様のお面をつける「菩薩体験」に挑戦させていただきました。
少しずつ表情の違うお面のなかから心に響いた1枚を選び、そっと顔につけてみます。
ほのかに感じる温かさがじんわり全身に染み渡るようです。
菩薩様を拝むことはあっても、菩薩様の気持ちになるのは初体験!
得難い貴重な体験をさせていただきました。

※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から2020年の法要は中止となりました。
2021年の実施については寺院の公式ウェブサイトなどを確認してください

● 屋島の合戦で名を上げた あのヒーローも即成院の信者

『平家物語』に登場する弓の名手、那須与一。実はこの方も即成院とは浅からぬ縁があり、お寺の境内には与一の供養塔があります。
源義経の命を受けて京都にはせ参じたものの、病気で体を壊した与一は、当時から病気平癒や必勝祈願に御利益があるとうわさのあった即成院の仏様を信仰。
一所懸命祈願したこともあって無事に病気が治り、屋島の合戦で一躍時の人となります。
「昨日まで全国的に無名だった方がたった一本の矢で大成功を収めました。
京都に凱旋したときには義経、弁慶に次ぐくらいの人気者になっていたのですが、実はそこですぐ武士をやめ、出家しているんです。
これはうちの仏様とお約束をされていたみたいで」

仏門に入り、最終的に即成院で亡くなった与一は、その戦功をたたえられて境内にお墓が建てられました。
現在墓所は改修工事中のため、「お堂のない、屋根のない」特別な状態でお参りすることができます。
与一が屋島の合戦でたった一本の矢で扇を射抜いたように、一発必中で願いがかなうよう扇に願いを書いて奉納する人も多数。
奉納された扇は御本尊に祈願後、お墓に奉納され、毎年5月第4日曜の「大護摩法要」でお焚き上げされます。

● 極楽パワーが満ちる(?) 芸術的な特別御朱印は年6回頒布

極楽浄土を感じられるお堂から、大願成就に御利益のある那須与一の供養塔まで。
世界のセレブをも魅了する即成院は、参拝の証である御朱印も魅力的です。
今回ご紹介した「二十五菩薩お練り法要」や「大護摩法要」など、年6回の法要に合わせて特別御朱印を授かることができます。
和紙や文字色にまでこだわった御朱印は特別な思い出の一体になりそうです。

■即成院(そくじょういん)
・住所:京都府京都市東山区泉涌寺山内町28
・拝観時間・御朱印授与時間:9:00~17:00
・アクセス(または最寄駅):JR奈良線「東福寺駅」から徒歩10分
・料金:500円
・URL:http://www.negaigamatoe.com
※本堂の内陣や供養塔への特別拝観の実施については寺院へ直接確認してください

 

引用元:ダイヤモンド・オンライン
https://news.yahoo.co.jp/articles/883a8a3d92627619096bb43889d3309891d8b5f2