今回の旅はこの駅から始まった
今年は2020年のオリンピックイヤー。仕事に飛躍を遂げたいと誓った年始でしたが、最近、仕事がいまひとつうまくいっていません。このままではいけない。運気を高めなくては!
こうした他愛もない話を友人にしたところ、「ここに行ってこい」とメッセージが届きました。それは、大阪に住む友人が考えた、由緒あるお寺や神社を巡る、開運のための旅程でした。ということで今回は、大阪へ「開運ひとり旅」に行ってきました。(池田美樹)
まず始めに向かったのは犬鳴山です。なんばから南海電車で泉佐野まで行って、さらにバスで約40分。急に山深くなったと思ったら、そこは犬鳴山です。昔から修験道の修行の地なのですが、ここにある「犬鳴山七宝瀧寺」に参拝してこいというのです。
聞くと、バス停からタクシーで行く方法もあるけれど、みなさん山を歩いて寺まで行くとおっしゃる。小1時間かかるよ、とのことでしたが、犬鳴山全体が山伏の修行の地と聞いて俄然、興味が湧き、歩くことにしました。
山を入るといきなり結界が現れ、「この先霊場」の文字が。気分が盛り上がります。全国でも有数の行者が今も修行に集まると言いますが、この日は山歩きの客も少なく静か。渓谷沿いの道はクネクネとくねり、岩場を上ったり下ったりとなかなか険しい。
「これも修行の一環なのか…!?」
ふだん、運動をほとんど、いえ、まったくしない私にはその山道は険しすぎました。とはいえ、お子さん連れのご夫婦に何度かすれ違ったので、子どもでも容易に上れる山には違いありません。ただ、私が運動不足で身体が重いだけなのです。行くか、戻るか。精神力が試されます。
途中にあるいくつもの滝やお社、お地蔵様の前を敬虔(けいけん)な気持ちで通り過ぎていくと、大きな赤い門が現れました。「瑞龍門(ずいりゅうもん)」といい、行者迎えの門として知られています。覚悟を決めて、門をくぐりました。
行者迎えの門「瑞龍門」
到着したのは「犬鳴山七宝瀧寺」。真言宗犬鳴派の大本山である七宝瀧寺は、和泉葛城山屈指の神仏集合霊場として現在に至っています。女人大峰とも言われ、女性の行者も多く修行していることでも知られています。開祖は約1300年前と、日本最古の修験根本道場です。
一心に護摩を焚いている僧侶の後ろを通り過ぎ、「行者の滝」まで行ってみました。3~10月までは一般の人でも滝行を体験することができます。
「滝行で身を清めて仕事運の向上を祈願する方や、婚活の成功を願うためにいらっしゃる方などさまざまです」と僧侶の大江一光さん。今回は残念ながら時期的に滝行をすることはできませんでしたが、剣に巻き付いた龍の姿をした倶利伽羅大龍(くりからたいりゅう)不動明王に、開運を祈願してきました。
不動口館の露天風呂。11:00~21:00(受け付け20時まで)、大人800円
犬鳴山七宝瀧寺を後にして、山から下りてくるまでふたたび小1時間。険しい山の上り下りにもう足はガクガク、冬だというのにうっすら汗すらかいています。
そして気がつけば、そこは大阪唯一の温泉郷「犬鳴山温泉」ではないですか。温泉ソムリエの資格をもつ私としては、素通りするわけにはいきません。
バス停の前のお宿「不動口館」の日帰り温泉で、滝行代わりに身を清めることにしました。本音は、山歩きで疲れた心身をいたわりたかったのもあるのですけれど。
犬鳴川のせせらぎを聞きながらの露天風呂が開放感にあふれて気持ちのいいものでした。
バスで泉佐野まで戻り、南海電車に乗って井原里駅へ。次に向かったのは、「奈加美神社」です。平安時代から地元の神様がまつられていたとされていますが、詳細は明らかでないそうです。最近は御朱印のブームも手伝って、わざわざ遠くから参拝しにくる人もいるのだとか。
この神社は、地元・泉州名産の水なすをモチーフに作った土鈴(どれい)「奈加美神社神鈴 成就なす」が有名。そっと持ち上げて振ると、手作り土鈴ならではの素朴な鈴の音がします。茄子は「成す」を思わせる縁起物。開運の願いを込めて、買い求めました。
つげの櫛各種。つげの木はおもに鹿児島の薩摩つげだそう
次に向かったのが、つげの櫛を製造販売している「辻忠商店」。南海電車「二色浜」駅から歩きます。このあたりは昔からつげの櫛づくりがさかんな土地。理由を尋ねると、その昔、海から上陸してきた異国の人に伝来されたという言い伝えがあるそうです。
平安の貴族の時代から、お祝いものとして贈られてきたつげの櫛。手に持つと優しい感触がします。髪をとかしてみると、なめらかにスッと髪が整い、髪美人になれそうな気がしました。
今では数軒しか残っていないという工房。私も髪がもっときれいになって、恋愛運が開けますようにという願いを込めて、つげの櫛を吟味して買い求めました。
最後に向かったのが「たこぼうずもなか」で有名な林宝泉堂(はやしほうせんどう)。南海電車「貝塚駅」から向かいます。たこの形をした皮の中に粒あんがぎっしり詰まったもなかは、かつて岸和田城を守った伝説の大たこが名前の由来。
大きめのもなかなのに、あんが意外とあっさりしてペロリといけてしまいます。
地元では縁起のよい名菓とされ、「出世もなか」としておもたせに大人気。ここで一服させていただいた時間は、歩き疲れた私をすっかり癒してくれました。
店主の奥様と気が合い、話し込んでいるうちに東京へ戻る時間が近づいてきました。後ろ髪を引かれつつ林宝泉堂を後にして、帰路に就きます。
もともとは友人のおせっかいから始まった旅とはいえ、不思議な「開運ひとり旅」を終えて私に残ったのは、なぜかさっぱりとした爽やかな気持ちでした。日々の忙しい生活でまとわりついた何か重い荷物のようなものが落ちたとでもいいましょうか。
あとは運気が向上するのを待つだけ…というのは虫のいい話ですが、生まれ変わったような気分になったのは違いありません。なによりも、大阪の奥深さにますます惹かれてしまいました。
引用元:DANRO
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200221-00010001-danro-life&p=1