“YouTuber和尚”の「スマホで聴ける説法」が話題、波乱の人生から新型コロナまで語る

YouTubeチャンネル『大愚和尚の一問一答』が話題の大愚和尚

540年の歴史を誇る禅寺で修行を積みながら、“YouTuber”となった和尚がいる。それが、大愚元勝(たいぐ・げんしょう)和尚だ。「スマホで説法が聞ける」と話題のYouTubeチャンネル『大愚和尚の一問一答』は、現在登録者19万人、中には100万回再生を超える動画も。一度は寺を飛び出し、波乱に満ちた半生を送ってきた和尚は、なぜ動画配信を始めたのか? “5つの顔”を持ち、時には大型バイクにまたがる…バイタリティーあふれる和尚の本音、そして様々な悩みを持つ現代の人々へのアドバイスを聞いた。

■寺を飛び出し海外放浪に借金返済、波乱の人生超えた和尚がYouTuberになるまで

僧侶になることを嫌って寺を飛び出し、自分を探して海外放浪までを経験した大愚和尚。起業して負った1億円の借金を5年で返済し、多角的に事業を展開する実業家でもある。さらに仏教の教えの素晴らしさに気づき、40歳を目前に寺に戻ってからは、住職としての活動をメインに、空手家、セラピスト、社長、教育者など5つの顔を持つ。そんなバイタリティーあふれる和尚によるYouTubeチャンネル『大愚和尚の一問一答』がスタートしたのは、今から3年前だ。人々から寄せられた悩みに和尚が答える形式で、『悪口や嫌がらせに対する正しい心構え』、『モテる人・モテない人は何が違うのか』、『「無気力」の原因と「やる気」を取り戻す方法』、『イジメられっ子の勝ちパターンは1日5分の〇〇にある』など、動画の内容は多岐にわたる。このほど、これら多くの相談に答えてきた経験をもとに、著書『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社)も発表した。

――なぜ、相談を受ける場をYouTubeに移し、配信を始めたのでしょうか?

【大愚和尚】今は直接相談を受けることはしていないのですが、昔は夜中でも、悩みがあって来た方の話を聞いていました。ときには、過食症と拒食症、リストカットを繰り返す高校生のお嬢さんが、目の前で手首を切ってしまうようなこともありました。そんな方々を見てきて、世の中には人知れず悩んでる人がこんなにもいるんだと実感したんですね。

――それは、衝撃的な出来事ですね。

【大愚和尚】はい。深い悩みは、知っている人にはなかなか相談できません。私のところに来る方も、菩提寺の住職には相談しにくいという人はもちろん、芸能人、大学教授、有名企業の経営者、はたまた風俗関係や犯罪に手を染めてしまった人もいる。顔を知られていたり、立場のある人、問題が多い人ほど相談できないことがたくさんあるのに、それをぶつける場所がないんです。だから、匿名で相談できるYouTubeを始めました。

――540年も続く禅寺の住職がYouTubeで説法…というと、あまり前例のないことですし、周囲からの反対はなかったのですか?

【大愚和尚】誰にも言わず、宣伝もせずに始めたので、誰からも反対されませんでした(笑)。必要な方に見ていただければいいと思っていたので、とくに「広めたい」という思いはなかったんですね。世間に必要とされないのならば、すぐに終わるだろうと思っていました。

SNS問題や新型コロナウィルスの不安にも、仏教の知恵が生きると大愚和尚

■「坊主が副業で丸儲けしている」と批判もあるが…

――今やチャンネル登録者19万人。これだけ広めるには、他のYouTuberの方のように何かビジネス的な戦略があるのでは?と思ってしまいますが。

【大愚和尚】そのようなものはとくにないですね。ただ、見てくれたIT企業の社長さんからは、「話が長い」「3分にまとめてしゃべりなさい」とアドバイスをいただきます(笑)。

――たしかに、短く収めるのはYouTube動画のセオリーですよね。

【大愚和尚】私としては、お寺で相談を聞いていたときにやっていたことをそのまま動画上に持っていきたかっただけなんです。だから、長さも決めず、台本もなく、いつもぶっつけ本番。その場での一問一答であり、私自身への試練でもあります。あとは、同じ悩みを持つ多くの人に届くように、タイトルの付け方に気をつけているくらいですね。

――でもこれだけ話題になると…。

【大愚和尚】「坊主が副業で丸儲けしている」と批判されることもありますが、動画の収益は私には一切入ってきていません(笑)。スタッフに還元したり、動画を作るための機材費になっていますね。

――なるほど。では、始めて良かったと感じることは?

【大愚和尚】私がYouTubeに期待しているのは、その可能性なんです。お釈迦様が悟りを開かれたのは35歳で、お亡くなりになったのが80歳。その間、色々な場所を旅して、人々の悩みに教えを授けていかれました。ただ、歩いて回られているから、その範囲は約250キロ圏内、静岡県くらい。ところが今、YouTubeで配信をすると、世界中の人たちから反響がある。非常に短い時間で、より多くの人たちに“苦しみの手放し方”を届けることができるんです。TouTubeは、現代ならではの可能性に満ちた媒体だなと思います。

■お釈迦様のスルースキルに学ぶべし? SNS誹謗中傷への対応の仕方

――今回、YouTubeなどで相談を受けてきた経験をもとに、著書『苦しみの手放し方』をまとめられました。人間関係から仕事、恋愛、健康、子育てなど、様々な悩みから解放される方法を答えています。

【大愚和尚】ペルソナを限定せずに、誰でも何か一つは引っ掛かり、悩みの解決に繋がるような内容を心掛けました。

――確かに、誰もが一度は経験したことのある悩みが多いです。たとえば、『「悪口を言う人」から逃げずとも、「悪口」は、いずれ過ぎ去る』という章もあって。現在ではSNS等での誹謗中傷が問題になっていますが、こうしたことにも応用できそうです。

【大愚和尚】お釈迦さまの言葉に、誹謗中傷も、褒められることも含めて、賢者はそれに心を動かされることがない、というものがあります。動かされない確固たる自分を保てれば、それが“悪口”からのバリアになるんです。誰かが悪口を言ったときに、お釈迦様はそれをずっと聞いていて、「あなたの言いたいことはそれだけですか? 私はそれを受け取らない」と言った。受け取ってもらえない相手は持ち帰るしかないので、悪口はその人の中で腐っていく。だから、結果的に悪口を言った人間は、自分で自分を滅ぼしていくことになるんです。

――受け取らない、というのは斬新です。ネットで言うスルースキルに通じるのかも。

【大愚和尚】受け取るか受け取らないかは、自分で決める。すぐに実行できなくても、そうすればいいということがわかるだけでも、希望につながります。このように、悩みや困ったことに対する根本的かつ具体的な処方箋が、仏教には詰まっているんです。

大愚和尚の著書『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社)

■新型コロナウィルスに惑う人々へ、「同時にあふれる欲、怒り、愚かさを認識すること」

――また、本書には「病気と健康」にまつわる章もあります。病気といえば、今は新型コロナウィルスにより、感染への不安を抱く人も多いと思いますが。

【大愚和尚】お伝えしたいのは、正しく恐れる、ということです。歴史を見てもわかりますが、伝染病には同時に発生する病気があります。それは、仏教で言う“三毒”、“貪・瞋・癡(とん・じん・ち)”=欲、怒り、愚かさ、というもの。マスクの転売が問題になりましたが、この機会に人々の弱みにつけ込んで儲けてやろうという欲深い人がたくさんいるわけです。“瞋”は、自分だけは助かりたいという思いから来る怒り。普段から自分が持ってる怒りが爆発し、政府や中国を責めたり、世界でも差別が広がりつつある。そして “癡”は、デマに踊らされる愚かさ。情報源を確認せずに買い占めに走り、本当に必要な人に物が届かなくなるということが起こっています。

――“貪・瞋・癡”、その通りかもしれません。

【大愚和尚】欲と怒りと愚かさ、これが同時に起きていることを認識しないと、さらに混乱していくことになります。気分も景気も落ち込み、人の免疫力も下がるんです。こういうときこそ、冷静にみんなで解決するんだという気持ちで、世界の人々と協力するべきでしょう。強力な世界平和のきっかけになると思います。自分にできることを考えて、まずは気持ちを前向きに保つべきですね。

――最後になりますが、和尚の教えが詰まった本書で、もっとも伝えたいことは?

【大愚和尚】“苦しみは手放せる”ということです。たとえば、“諸行無常”という言葉がありますね。これは、今ある幸せはいつか崩れ去る…という悲しい響きもありますが、それと同時に、とても大きな可能性を秘めた言葉なんです。苦しみの渦中にあっても、“諸行無常”であるがゆえに、その苦しみもいつかはなくなっていく。じつはネガティブな言葉ではなく、とてもポジティブな言葉なんです。どんな苦しみであれ、それはあなたの心の中で起きていること。ならば、コントロールできる可能性がある。もし自分でできないなら、仏の知恵を借りればいいんです。そのための参考書のようなものが、この本だと思っていただけたら嬉しいですね。

 

引用元:オリコン
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200319-00000321-oric-ent&p=1

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