「鉄印帳」が人気、苦境の三セク鉄道「うれしい誤算」


人気が高まる「鉄印帳」

寺社をめぐって御朱印を集める「御朱印帳」ならぬ、地方にある第三セクター鉄道の駅を回って鉄印を集める「鉄印帳」が人気だ。

新型コロナウイルスの感染拡大下でも「混んでいないから行きやすい」と、鉄印を求めて旅に出る人も多いといい、乗客の少ない苦境を逆手に取った形だ。

全国的に第三セクター鉄道の経営難が続く中、新たな乗客の掘り起こしが期待がされている。

鉄印帳は、「第三セクター鉄道等協議会」に加盟する40社が1冊2200円で販売。

各社の主要な駅の窓口で鉄印帳と乗車券を提示した上で、記帳料(300円から)を払えば、鉄印をもらえる。

全社の鉄印を集めると、希望者はシリアルナンバー入りの「鉄印帳マイスターカード」(千円)を購入できる。

各社の収益改善を目的に7月10日から販売を始め、約1カ月で5千部あまりを完売したため、急(きゅう)遽(きょ)1万部を増刷した。

「これほどの人気があるとは思いませんでした。うれしい誤算です」。

同協議会の本(ほん)棒(ぼう)公二事務局次長は思わぬ反響に喜ぶ。

人気の秘密は、各社が工夫を凝らしたバラエティー豊かな「鉄印」だ。社長が1つずつ直筆で描いたり、季節ごとに異なる図柄を用意したりする会社もあり、本棒さんは「『集める楽しみ』を感じやすく、鉄道ファン以外の層にもローカル線への関心を持ってもらうきっかけになっているのでは」と分析する。

新型コロナの影響で減少した乗客数の回復にも、一役買っている。

「かねてからある『乗客が少ない』というイメージが、コロナ下でも行きやすいようだ」と本棒さん。

兵庫県加西市と小野市を結ぶ北(ほう)条(じょう)鉄道では、コロナ下で自粛生活が続いたうえイベントなども開催できず、一時は乗客が半減。だが、鉄印帳の販売が始まると、駅の窓口に行列ができた。鉄印を求めて九州から訪れる乗客もいたという。

一方、7月の九州豪雨で被災した熊本県人吉市のくま川鉄道。復旧のめどはたっていないが、特例としてインターネット上で鉄印を販売している。

沿線にある神社が祭る龍をあしらった図柄で、購入者には鉄印が描かれた紙が郵送される。

鉄印帳の発起人でもある同社の永江友二社長は「復旧を応援したいという意味で『鉄印』を買う方も多いのでは。

実際に乗車していただけるよう早期復旧に努めていきたい」と力を込める。

鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは「鉄印帳のような全国規模の鉄道イベントは、国鉄が分割・民営化して以降は、ありそうでなかった画期的な企画だ」と評価。

その上で「沿線に観光資源がない鉄道でも、鉄印自体が目的となって多くの人が訪れれば、出資している自治体にとってもプラスの効果が見込めるのではないか」と話している。

◇第三セクター鉄道

国や自治体と民間会社が共同出資して運営する鉄道。
旧国鉄の赤字線の廃止計画に伴い、存続を図ろうとする自治体関係者が次々と立ち上げた。
都市鉄道が走らない山間部などの地域住民の貴重な“足”となっている半面、人口減少に伴い厳しい経営状況が続いている。
国土交通省によると、第三セクター鉄道を含む地域鉄道の輸送人員は年々減少傾向にあり、平成30年度はピーク時の3年度と比べ、約21%減少した。
12年度以降に44路線が廃線となり、30年度は96社のうち約7割が赤字経営だった。

 

引用元:産経新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/767b5160bb1da0331cc90161499ffa5e08d7d766

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